阿保さんの本にグワシッと心臓をわしづかみにされた僕は、本から参考にできるところはないか、繰り返し読み込みました。
屋根や壁など、参考にしたいところは数多くあったのですが中でも印象的だったのがロフトです。
巣箱のようなロフト
「大工さん」と聞くと「古臭い」「センスがない」ような印象を受けるかもしれませんが、阿保さんはまったく違います。
阿保さんが造る家は「洗練」という言葉がぴったり。
窓のサッシや階段手すりや照明フードなど、細かい箇所にも妥協はなく、パクりたいアイテムのオンパレードです。
中でも本に載っていたこのロフト。
まるで鳥の巣に見えるその形にココロ奪われました。
さらに阿保さんは文中で”お客さんがあったときに使ってください”と言っている。
客室に?!
おもしろー!それ採用!
絶対これを作りたいっ。
ぼくはさっそく工藤さんとの打合せで「こういうロフトを作り鯛っ!ギョギョギョッ」と伝えたのでした。
茶室のような空間に
イメージを理解してくれた工藤さんは
「窓を床ギリギリにして、”茶室”みたいにするのはどうですか?」
と提案してくれました。
ウホホっ、それ良いかも?胸をドラミングして喜びを表したぼくは、「そのイメージでお願いします」と伝えました。
この家で唯一畳が入る部屋です。
ビーバーの記憶
なぜぼくがこのロフトに強く惹かれたか。
自分を知るためにも掘り起こす必要があります。
みなさんも知っているビーバー、彼らの巣はどうなっていたか覚えていますか?
ぼくは子供の頃、「野生の王国」だか「地球ドラマチック」だか、とにかくNHK動物ドキュメント系で見た「ビーバーの巣作り」を強烈に覚えています。
まずは忘れている人のためにもう一度下の図で”ビーバーの巣はどんなつくりだったか”思い出してください(アメリカのWikipediaより)。
どうですかこの「安心感」。
「守られてる感」。
外界との「隔絶されてる感」。
巣があまりにも頑丈で川の流れを変えて辺りを水浸しにするため、北米では駆除されすぎて絶滅しかかってしまった可哀想なビーバー。
最高に落ち着く空間ですよね。
これが「最上のコンフォート」ってヤーツじゃないの?
ステレオタイプに言えば胎内回帰願望になるのでしょうか、とにかくこういう「頑丈で狭い空間に入りたい願望」がとても強いのです、ぼくは。
誰かカウンセリングしてください。
また、昔見た夢でよく覚えているのが、ガラッとふすまを開けた部屋には羽毛布団がギュウギュウに詰まっており、両手でグイッとこじ開けた隙間に頭から身体をねじ込んだぼくは、上下左右を羽毛布団にやわらかく圧迫されながらミミズのように進んでいく、という「体験」です。
すごく幸せだったのを覚えています。
誰かカウンセリングしてください。
因みに羽毛布団を進んでいくと全体が強化ガラスになっている壁に突き当り、しばらく外の様子を観察した(雪が降っていました)ぼくは、次に「上の階層」にもぞもぞ移動していったのでした。
現在のロフト
子供も居ますしぼくもいい大人ですので、さすがにビーバーや「羽毛ミミズ」の話は工藤さんに言ってません。
住宅ローンが下りなくなると困りますし。
そこまで精神のヒダを見せなくても充分意向を汲みとってくれた工藤さんは図面に起こしてくれました。
おー巣箱になってる~。
どんな鳥がはいるのかな~~。
落ち着きそう~~。
ありがとう工藤さん棟梁。
出来上がりが楽しみ。
どんな照明にしようかしらん。
(つーづく)