家づくりをはじめたころ、雑誌に載っているハウスメーカーや工務店の家に憧れました。
住宅展示場にも行き、メーカーの家をハシゴしました。
そんなとき情報収集として図書館で借りた一冊の本。
その本を読み終えた瞬間、「住宅メーカーや工務店で家を建てる」という選択肢は消滅したのです。
耕木杜 阿保 昭則さんを知る
皆さんもそうだと思いますが、ぼくたちも家造りを考えはじめたときたくさん本や雑誌を読みました。
休日には夫婦二人で大きな書店を何件もハシゴしたり、Amazonレビューから良さ気な本を探してみたり。
その中でぼくたちのハートにビシシッと「ストラーーーーイク!!」したのがウルテク大工、阿保 昭則(あぼ あきのり)さんの著書、『大工が教えるほんとうの家づくり』。
はじめは図書館で借り、期限が来たので返却し、やっぱりもう1回借り、借りてるあいだに何故か洗濯機にドロップイン、ドラム式洗濯機で叩き洗いされた本はふやけてボロボロになり、弁償するついでに2冊購入、1冊は図書館にゴメンナサイと返却し、もう一冊は自分用とした、ぼくたちの『いえづくりの教科書』です。
今でもいえづくりのポイントポイントでこの本を読みなおし、「そうか、そうだった」と再確認しています。
阿保さんが建てる家の何が好きか
お伝えしたいポイントはたくさんたくさん山程ありますが、ひとことで言うとその「質感の高いシンプルさ」。
それを生み出しているのは、
- 壁や床の質感が素晴らしいこと
- 安っぽさが微塵もないこと
- 本物の材料を使っていること
- それにより創り出された「高品質な空間」
- 超絶大工技術と木の材質や性質を知り尽くした知識
- それなのにそんなに高くない、どちらかと言うと安い建築費
- 阿保さんはビートたけしに似ている
ことでしょうか。
まだまだ書き尽くせないほど魅力はありますが、
「わ、ワェはこんな家に住みたいっ!」
と強烈に思いました。
阿保さんが建てる家の屋根は軒が深く、左官壁の質感は写真を通しても素晴らしく、本物の木を使ったその家は、確かに「日本の家」ですがどの住宅メーカーの家よりも洗練されて新しく、それまで雑誌やネットやモデルルームで見た家が一瞬で圏外になるほどかっこいい。
嗚呼、いままで見てきた家のなんと質感の乏しく安っぽいことよ。
おむすびを食べながら本から顔をあげた僕は「こ、これがほ、ホントの家なんだなぁ。」と呟いたのです。
阿保さんのウルテクで建てられた「Rの家」
本に掲載されている中で、大工の技術や建築にまったく知見がなかった僕でもすげーーーーっと思った建築を一つ紹介。
みなさんも是非本で読んでください。
強烈な印象「Rの家」
「Rの家」という”家全体が湾曲している”とんでもない家なのですが、その作り方がすごい。
もちろん木造。
設計した建築家には”木造では不可能”と言われていたそうです。
そんな「不可能」を「可能」にした技術がコチラ。
一本の直方体の木を、上の図のように加工し湾曲した一本の木に変えてしまうのです!
す、すげーーーーーっ、かっこいいいいいいいいいいっ!
これを何本も何本も手作業で繰り返し、家全体を「湾曲させて」しまうのです。
嗚呼、なんという技術よ。
まさに「職人芸」。
かっこ良すぎる。
素人ながらにもすごい作業量&テクニックだと思いますが、阿保さんは文中で”時間はかかりましたが”の一言で片付けてしまうのです。
あ、アニキッ!!いや、お父さんっ!
あなたを遠くから見も知らない僕が「The.Daiku」と呼ぶのをお許し下さい。
この本には実際に建築費も載っていますが、Rの家は2,000万もしてない。
これだけの手間と本物の材料が掛かってるのに。
いま手元に本が無いですが、1600万くらいだったような?
”魚魚魚ッ!こんなに安いのでごじゃいますかっ?!”
ドキドキしながらページを凝視したものです。
そしてそうして出来た「Rの家」の内壁がまた素晴らしい。
”予算が無いので仕上げ塗りをせず中塗りに藁を混ぜておしまいにした”
というその壁はグレーで土の質感に溢れ、ステンドグラス様の窓から降り注ぐ光と相まって(本文にもありましたが)まるで”教会”のよう。
神々しい。
本をパタンと閉じた僕は視線がまっすぐ前方に定まり、確かに見えた「みらいのいえ」へつづく道を一歩踏み出したのでした。
(つづ君)